日々訓練

さて、伯母は越してきて1週間ほどなのだが、母は、施設内の約束事やらポストの番号やらを伯母に覚えこませようと、「一緒にポスト行ってみよう。番号押して開けてみて。」とか、「フロントに電話するのは、どうやるんだった?」とか、あれこれやって(やらせて)いた。この1週間、母は行くたびにそうやって色んな新しいことを教えては、「全然覚えようとしない」と愚痴っていたようだ。
父がわたしにぼそっと耳打ちした。
「あんた(Jreiko)も、小さい時から、ずっとああやって『次これやってごらん』とか『あれはどうするんやった?』とか言われ続けてたんよ。そのときとおんなじ。」
それを聞いて、「なるほど、わたしは、こんなふうに、日々、母のテストを受けつづけていたのかぁ」と、合点がいった。
これまでは、「毎日が勉強でかわいそうだった」と父から聞いたり、「お母さん、先生みたいやな」とウチの相方から言われても、いまいち自分がどういう状況に置かれていたのか把握できてなかった。それがこのとき、初めて俯瞰的(客観的)にながめることができたような気がしたのだ。
大げさなようだが、長年のモヤモヤがさっとクリアになったような気がした。

小学生のころ、ほかの子たちは「悪いことをしておこられる時、ママがこわい」と言っていたけど、わたしは、べつにすごく怒鳴られたり怒られたりするわけじゃなくても、いつも母がこわかった。
何がどうこわかったのか、長いこと、全然わからないままだった。
この日の様子を見て、ちょっとわかった。「『やってごらん』と言われたことができなければ、けなされるし、機嫌を損ねる」のが、こわかったんだね。