天才は無心なのです

エースをねらえ!」16巻(オリジナルのコミック版)。岡ひろみの憧れの先輩であり続けたお蝶夫人(竜崎麗華)が、宗方コーチの死を乗り越えて国際舞台へ進むひろみのために、静かに語るセリフ。
その昔、庭球界の希望とされた選手二人(かつての宗方コーチと桂コーチ)が選手生活を断ってしまい、「日本の庭球界の夜明けは、いったいいつまで続くのだろう」と力を落とす父親(庭球協会の竜崎理事)に、10歳そこそこのお蝶夫人「あたくしがいます、おとうさま。あたくしが強くなります。」と決意表明をして、それ以来学生テニス界の王道をあゆんできたのだという。
それを回想しつつ、お蝶夫人はひろみにこう言うのだ。

「それが、まちがいだった。
『わたしがやる』とか、『わたしにならできる』とか、いつも自我が表面に出る者は頂点には登りきれない
天才は無心なのです。」
「近ごろやっとあたくしにもわかりかけてきたことです。一目で天才のごとく見える人は、すでに真の天才ではない。一目では天才と見えない天才こそが、真の天才なのです。」

また、別の場面で桂コーチは藤堂・尾崎・千葉の3人に言う。

「昔、剣術の極意に曰く。『勝に不思議の勝あり』『負に不思議の負なし』
負けるときは常に負けるべくして負けるが、勝つ時は、本人が不思議に思う勝ち方をすることがある。
試合に勝って『なぜあの時勝てたんだろう?不思議だ』と思う、そういう経験を持てるような人間にならなければいけない。」

「エース」はやっぱり深い。実家から持ってきてよかった。