[past] ひとりで頑張った思い出話

高校2年生の時。
コーラス部の3年生の先輩が受験ではやばやと辞めてしまい、クラブの正式な部員はわたしひとりになってしまった。
それでも、先輩から30年以上続いてきたヘンデルメサイヤ演奏会はどうしてもやりたかった。一番の動機は不純で、グリーの男子学生に会えるから。...いや、本当に歌いたかったし、区切りの年が近づいていたし、創始者の先生にも会いに行ってこれは絶対にやらないといけないとおもったのだ。うんうん。
孤軍奮闘。「ひとりでコーラスはできないじゃない」と親に言われながら、「メサイヤ要員」を集め、「讃美歌要員」を集めて練習や行事を乗り切り、次第に正部員に引き入れていった。ただ、手伝ってくれたみんなに感謝しつつも、「ひとりで中心になってがんばってるんだ」と我ながら思っていた。周りの人からも「よく頑張ってるね」と言われて、「好きなことだからつらくないよ」なんて言っていた。
そして、高3の時。クリスマスの演奏会の場所としておさえていた会場が、突然、都合で使えないことになってしまった。これほど大きなトラブルに直接蹴倒されたのは、初めての経験だった。
顧問の先生は普段からとても厳しい人で、「実力もともなわないのに、演奏会なんて恥ずかしい」と、普段の活動に対してもあまり良い顔をしていなかった。その先生に、不手際を怒られるのを覚悟で、非常に重たい心持ちのまま、「実は、メサイヤの場所が、使えなくなってしまったんです。」と報告に行った。すると、驚いたことに、「それは大変なことだわ。すぐに代わりの場所を探しましょう。」といって、早速電話を手にして、各方面に問い合わせを始めてくださったのだ!そして、またたく間に代わりの場所の候補があがってきた。
家に帰ると、父がまた別の筋から会場の案を出してくれていた。

わたしは間違っていた。ひとりで頑張っててえらいなんて自分でおもっていたけれど、それはひどい傲慢だった。わたしひとりでなんて、何も出来ない。「周りによって生かされていたんだ」と、初めて心の底から感じた瞬間だった。

そんな出来事を通して、わたしは、その年のクリスマスに洗礼を受けることになったのだった。