「親ばか」を社会に持ち込むな

イラクで拘束された3人の人質がまだ解放されていなかった日。
合唱団のメンバーと食事をしていて、その話が出た。
人質の家族が首相に会いに行ったり、記者会見で「自衛隊を戻してください」と言ったとかいう話になって、それぞれのまったく異なる意見が飛び交った。
中に、「親ばかにも程がある」と怒った人がいて、わたしは、ああ、そうか、とおもった。
そうか、これは、所謂「親ばか」の行動であり発言だったんだよ。

親ってのは、本来「親ばか」で自然なんだよ。
首相に会ってお願いしたいって思うのは親心としては当然なんだよ。
それが親の役目なんだよー。
でもそれは、元来、公式コメントとして、TVにうつしだされるようなものでは、ない筈。
社会的道義とは相容れないものなんだから。

じゃあ、報道は、「親ばか」をあんなに伝えて、結局、一体何を言いたかったの?!
人質家族がテレビのニュースに出演しているのを、最初に見かけたとき、わたしは、
「なんでテレビ局は、『自衛隊を戻してください』と言うってわかりきっているこの人たちを、わざわざ引っ張り出すんだ?」という、強い違和感と疑問と怒りを覚えた。
このニュース番組は『自衛隊を戻せ』という自分達のメッセージを強めるために、普通の精神状態にはない人質の家族を、利用してんじゃないの?!って。

で、あとから家族に対する批判の声を伝えてるんでしょ。
あんたたちニュース番組が、社会的道義からは当然外れる「親の生の心の声」を垂れ流すから、そういう世論の大反響になったのよ。

テレビ局のみなさま。
人質の家族を映したのは、今回、人質解放作戦の戦略上仕方なかったのかもしれないけれど、関係者全員の今後の社会生活や、社会全体の『親のありかた』に影響を及ぼすような、「ありのままを晒す」行為は、今後は二度としないで下さい。
ホントに。