世界一美しいぼくの村

子どもの学校の宿題で、「世界一美しいぼくの村」という物語の音読があった。
主人公はアフガニスタンのパグマンという村の男の子、ヤモ。アフガニスタンというと砂漠のイメージがあるけれど、実は雪山や大草原、緑の森などもあり、果物がたわわに実るという。お兄ちゃんが戦争に行ってしまったので、かわりに、ヤモが初めて市場へ果物を売りに行くことになり、お父さんと一緒に出かける。最初は売れなくて小さくなっていたけれど、初めて買ってくれた女の子や、パグマンの果物を楽しみに買いに来てくれるお客さんのおかげで、さくらんぼは飛ぶように売れてゆく。帰りにお父さんは、もうけたお金を全部使って、市場で真っ白な子羊を買って一緒に連れて帰る。パグマンに戻ったヤモは、「パグマンはいいな。世界一美しいぼくの村。」とつぶやいて、春の予感に胸をふくらませる。
そしてそのあと、こういう一文で物語は唐突に終わる。

「その年の冬、村は戦争ではかいされ、
今はもうありません。」

初めて音読を聴いた時、パタンとそこで本を閉じた子どもに驚いて、思わず教科書をひったくって確認してしまった。
教科書のページには、上の一文に、ヤモとお父さん、そして白い子羊の後ろ姿の挿絵が、添えられていた。「今はもうありません」というかんたんな言葉が、かえって心に重く、空しく残る。
この物語が、子ども達の心にも強く残ってくれたらと、思う。